「天災は忘れた頃にやってくる」は、関東大震災を調査した寺田寅彦の言葉だった?
寺田寅彦
寺田寅彦

「天災は忘れた頃にやってくる」という有名な言葉があります。
「天災というものは、その恐ろしさを忘れた頃にまた起こるものであるから、用心を怠らないこと」「油断は禁物であるという戒(いまし)め」という意味の警句(けいく)ですが、これは、物理学者で文学者だった寺田寅彦(てらだ とらひこ)の言葉といわれます。

しかしながら、この言葉は、手紙や手帳なども含めて、寺田寅彦本人が書いたものの中には見当たらないようです。

この件に関して、今村明恒(いまむら あきつね)著「地震の国」(1929年発行)には、

「天災は忘れた時分に来る。故寺田寅彦博士が、大正の関東大震災後、何かの雑誌に書いた警句であったと記憶している。」

とあります。

今村明恒は、関東大震災後における地震研究の指導者で、東京帝国大学の教授です。
関東大震災の調査には、寺田寅彦と今村明恒が連れ立って出掛けたこともありました。

そして、この警句に似た文章は、寺田寅彦の書いた随筆(ずいひつ)などの中で、繰り返して出てきます。
寺田寅彦が、関東大震災に際して、大正12年9月29日付けで、当時ドイツに滞在していた友人であり、かつ「寺田寅彦随筆集」の編集者である小宮豊隆(こみや とよたか)に宛てた手紙の中では、

「調査の必要から昔の徳川時代の大震火災の記録を調べているが、今度われわれがなめたのと同じような経験を昔の人が疾(とう)になめ尽くしている。それを忘却してしまって勝手なまねをしていたためにこんなことになったと思う。昔に比べて今の人間がちっとも進歩していない。進歩しているのは物質だけでしょう。かえって昔の政府や士民のやり口が今より立派なような気もします。」
(松本哉著 寺田寅彦は忘れた頃にやってくる 集英社新書より)

と述べ、

また、「寺田寅彦随筆集」の中では、

「人間も何度同じ災害に会っても決して利口にならぬものであることは歴史が証明する。東京市民と江戸町人と比べると、少なくも火事に対してはむしろ今のほうがだいぶ退歩している。そうして昔と同等以上の愚を繰り返しているのである。」

あるいは、災害対策ができていない事を指して、

「天災が極めてまれにしか起こらないで、ちょうど人間が前車の転覆を忘れたころにそろそろ後車を引き出すようになるからであろう。」

と述べています。

これらは、まさに、「天災は忘れた頃にやってくる」ということをいっています。

また、「児童生徒に聞かせたい名言1分話 「贈る言葉」として最適253話」 柴山一郎/著 学陽書房 2008.2 p.79「天災は忘れた頃にやってくる。」の項には、以下の記述があります。

「この名文句は、寺田寅彦の随筆「天災と国防」(昭和九年)にある一節を弟子の中谷宇吉郎が要約したものといいます。「寺田先生が防災科学を説くときにいつも使われた言葉」として紹介され広く知られるようになりました。」

さらには、「寺田寅彦と現代 等身大の科学をもとめて」 池内了/〔著〕 みすず書房 2005.1 p.134-「第5章 自然災害の科学」の冒頭の「天災は忘れた頃にやってくる」の項に、 以下のような趣旨(しゅし)の文章があります。

「寺田寅彦の文章にこの言葉は発見できないが、近い表現として、「天災と国防」(S9.11)にある「畢竟そういう天災が極めて稀にしか起こらないで、ちょうど人間が歯車の転覆を忘れた頃に そろそろ後車を引き出すようになるからであろう」という文章が紹介され、 これを要約したのが、「天災は忘れた頃にやってくる」である。 」

「天災は忘れられたる頃来る」と書かれた石碑(高知市小津町の寺田寅彦記念館)
寺田寅彦 寺田寅彦記念館 碑文
写真は、こちらからお借りしました。

以上のことをまとめれば、「天災は忘れた頃にやってくる」という言葉は、寺田寅彦の随筆「天災と国防」にある一節を、弟子の中谷宇吉郎(なかや うきちろう)が要約したもので、これが広く一般に広まった、というのが結論のようです。

参考にしたサイト
寺田寅彦の伝説の警句 天災は忘れた頃に来る | 地震・防災「あなたとあなたの家族を守るために」
http://www5d.biglobe.ne.jp/~kabataf/torahiko/torahiko.htm
寺田寅彦の「天災は忘れた頃にやって来る」という言葉が載っている随筆をみたい。 | レファレンス協同データベース
http://crd.ndl.go.jp/reference/modules/d3ndlcrdentry/index.php?page=ref_view&id=1000017074
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